2024/07/29
多くの方が「相続手続きは複雑で面倒だから後回しにしたい」と感じているかもしれません。しかし、相続手続きを放置すると重大なデメリットが生じる可能性があります。今回は特に注意が必要な相続手続きをしないことによるデメリットについて詳しく解説します。
相続には「単純承認」「相続放棄」「限定承認」の3つの方法があります。相続放棄や限定承認を選択するためには、相続開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所に申立てをしなければなりません。この期間を過ぎると、放棄や限定承認ができなくなり、結果的に故人の負債を含む全財産を相続することになります。特に、負債が多い場合には相続放棄が有効な手段となるため、早めの対応が求められます。
法定相続人には最低限の遺産を受け取る権利、いわゆる「遺留分」が保障されています。しかし、遺留分を侵害された場合の請求期限は、侵害を知った時から1年以内、または相続開始から10年以内です。この期限を過ぎると、請求する権利を失い、遺産を受け取れないままとなります。遺留分侵害額の請求は迅速に行うことが重要です。
相続回復請求は、法定相続人の相続権が侵害された場合に、権利の回復を求める手続きです。この請求権には「侵害を知った時から5年以内、または相続開始から20年以内」という期限が設定されています。これを過ぎると、相続権を回復することはできなくなります。法定相続人の権利を守るためにも、早急に対応する必要があります。
相続した遺産の中には、名義変更をしないと権利が消滅するリスクがあります。例えば、預貯金の払戻しは「権利を行使できることを知った時から5年以内」に行わなければなりません。この期限を過ぎると、預貯金の権利が消滅します。また、株式の名義変更をしない場合、株主としての権利を失う可能性があります。不動産についても、相続登記をしないと他の相続人に持分を売却されたり、権利関係が複雑化するリスクがあります。早めの名義変更が必要です。
相続税の申告期限は相続開始から10か月以内です。この期限を過ぎると、追徴課税や延滞税が発生し、最悪の場合、財産が差し押さえられることもあります。さらに、偽りや不正行為があった場合には、刑事罰を受ける可能性もあります。適切な申告と納税を行い、罰則を避けるためには期限を守ることが重要です。
相続手続きをスムーズに進めるためには、基本的な流れを理解しておくことが大切です。以下に一般的な相続手続きの流れを示します。
相続放棄や限定承認を行わない場合、故人の負債を含むすべての財産を相続することになります。これにより、相続人は予期せぬ借金を背負うリスクがあります。
遺留分侵害額の請求を行わない場合、相続人が受け取るべき最低限の遺産を受け取れなくなる可能性があります。特に、遺産の大部分が特定の相続人に渡る遺言がある場合、他の相続人は大きな損失を被ることになります。
相続回復請求を行わない場合、法定相続人の相続権が侵害されたままになり、権利を回復することができなくなります。これにより、本来受け取るべき遺産を受け取れないままとなります。
名義変更を行わない場合、預貯金や株式の権利が消滅したり、不動産の権利が他の相続人に侵害されたりするリスクがあります。また、生命保険の請求権も消滅する可能性があるため、注意が必要です。
相続税を申告しない場合、追徴課税や延滞税が発生し、最悪の場合、財産が差し押さえられることがあります。適切な申告と納税を行わないと、高額な罰金や懲役刑を受ける可能性もあります。
相続手続きをスムーズに進めるためには、以下のポイントに注意しましょう。
相続手続きを放置することは、多くのデメリットを生じるリスクがあります。相続放棄や限定承認ができなくなる、遺留分侵害額の請求ができなくなる、相続回復請求ができなくなる、遺産の名義変更をしないと消滅のリスクがある、相続税を申告しないと罰せられるリスクがあるなど、重大な問題が発生します。これらのリスクを回避するためには、早めに専門家に相談し、必要な手続きを適切
に進めることが重要です。相続手続きを怠らず、円滑に進めることで、トラブルを防ぎ、遺産を適切に受け取ることができます。